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世界保健機関(WHO)は、年間490万人ともいわれるタバコによる死者を減らすため、「タバコ規制枠組み条約」を推進し、2003年5月21日採択されました。国内でも、健康増進法が成立し、受動喫煙の被害をなくす方向性が示されています。受動喫煙は、家庭、職場、公共施設、飲食店等で、また、路上でも発生します。日本は世界の中でも特に受動喫煙者が多いといわれています。吸わない人の健康までが損なわれる受動喫煙は防止しなければなりません。そこで今月は、誰もがさらされている受動喫煙の害について、お伝えします。
自分の意思とは関係なく空気中のタバコの煙を吸い込んでしまうことをいいます。空気中には、2種類のタバコの煙があります。
主流煙---喫煙者が吸い口から吸い込むタバコの煙のこと。喫煙者の肺を通って空気中に吐き出された煙は、呼出煙(こしゅつえん)という。
副流煙---紙巻タバコや葉巻、パイプ等の火をつけた部分から、直接空気中に出る煙のこと。
副流煙には、主流煙よりも高い濃度で、多くの有害物質が含まれています!
毒性のあるもの---受動喫煙の代表的な有害物質である一酸化炭素は、血液の酸素を運ぶ力を弱めるので、身体が酸素不足を引き起こす。このために頭痛が起こる。
発がん性のあるもの---副流煙に高濃度で含まれているニトロサミン類は、発がん物質として有名。喫煙者のそばにいる非喫煙者も肺がんになる危険がある。夫が喫煙者の場合、妻が肺がんになるリスクは、20%〜50%も高くなるという研究報告が数多く出されている。
大人への影響---肺がん、副鼻腔のがん、心臓疾患、喘息の発作、脳卒中、慢性気管支炎、白血球やリンパ腫など。
子どもへの影響---肺炎、気管支炎、中耳炎、聴覚障害、呼吸機能の低下、喘息。最近の調査では虫歯になりやすいことが明らかになった。
すでに健康障害がある人への影響---心臓疾患やアレルギー、呼吸器疾患、循環器疾患などの病状を悪化させることになる。
胎児への影響---妊娠している女性は、2人分の呼吸をしている。受動喫煙は、低体重児や身体奇形、小児がんの原因になる可能性が指摘されている。
つまり喫煙者はもちろん非喫煙者も「タバコ病」の恐ろしい危険にさらされているのです!
厚生労働省が“健康日本21”で提案した「公共の場や職場での分煙の徹底、及び効果の高い分煙についての知識の普及」という目標をよりいっそう推進するために「受動喫煙の防止」が明記された健康増進法が2003年5月1日に施行されました。(図参照)健康増進法は、マナーやモラルといった個人的な問題を超え、環境整備に対する管理者の責任を求めています。
家庭で
禁煙のルールをつくる---訪問者に対しても、丁寧にハッキリと家の中での禁煙をお願いする。
見やすい場所に掲示する---タバコに火をつけることがないように、壁に禁煙のサインを貼って置く。
公共の場所で
子どもを守る---子どもが生活する施設内では原則禁煙、少なくとも確実な分煙が行われるように働きかける。
禁煙コーナーを選ぶ---レストランなどでは。禁煙席が設けられています。
少し待つことになっても禁煙席を選ぶようにする。
喫煙場所に注意する---公共の場所で、灰皿の置いてあるところは喫煙が許されている。煙がこないほうに移動する。
煙が迷惑だと喫煙者に話す---丁寧に依頼することもその方法のひとつかもしれない。特に締め切った場所での受動喫煙は、もっと大きな害になる。
東京都千代田区では歩きタバコ、吸殻や空き缶のポイ捨てなど町の生活環境の整備に関する条例が制定され2002年10月に施行されました。この条例をきっかけに各地で受動喫煙対策が始められています。
参考文献 受動喫煙対策の手引き 産業医科大学 大和 浩
これだけは知っておきたい受動喫煙 日本禁煙推進医師歯科医師連盟)
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