白石尚
元日本禁煙協会会長
全国禁煙分煙推進協議会顧問
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長い間たばこを吸い続けると、からだに悪影響を及ぼし健康を害する原因になります。もし皆さんの身近に喫煙されている方がいらした場合、その大切な人を禁煙に導く豆知識を記しますので、参考にしてください。
Q この度、「タバコの教科書(知っておきたい喫煙の危険性)」の改訂版を出版されたということですが、実際に喫煙にはどのような危険性がひそんでいるのですか。
A タバコが体に悪いということは、みなさんご存知なのですが、その危険性の大きさをあまり分かっていない人が多いです。日本人の死亡率の第1位はがんで、中でも胃がんがこれまでトップだったのですが、現在では逆に肺がんがトップに躍り出てきました。肺がんの死亡者は今や年間5万人を超え、例えば小都市の全人口が亡くなる計算です。肺がんの7割はタバコによることが疫学的に証明されています。
タバコをいったん覚えてしまうと、なかなかやめられず、吸うとほっとする、安らぐ。効用があるように思いますが。それは依存性の強い薬物だからであり、実際は「百害あって一利なし」。わざわざお金を払って、肺がんの一番の理由であるタバコを吸うことは時代遅れです。
先ほど、肺がんのことを申しましたが、タバコの害はこれだけではありません。普通タバコというと肺がんや慢性気管支炎などの呼吸器の疾患と思いますが、肺がんと変わらず人々の命を奪っているのが循環器系などに対する害です。最近は低タールや低ニコチン、マイルドなタバコが登場し、きついタバコからマイルドなタバコに切り替える人が多いですが、これはまやかしです。マイルドなタバコに切り替えても、必ず本数を増やして一定のニコチンが体に回るように補うか、深く吸うように調節して、ニコチンの量は変わらないようにしているのです。みなさんは低ニコチンだから害はないと思うのですが、本数が増えれば一酸化炭素の害は増え、これが変わらないどころか循環器系にも深刻な影響を与えているのです。
その害を及ぼすものに三大毒素といわれるものがあります。タール、ニコチンについてはパッケージにも表示されていて、知られていますが、一酸化炭素については案外知らない人が多いですね。一酸化炭素は血管の内側を傷つけて、コレステロールがその中にしみ込み、このことによって動脈硬化、さらに狭心症や心筋梗塞を引き起こすのです。
さらにタバコを直接吸う人は自業自得かもしれませんが、昨今話題になっているのが「副流煙」です。これは、喫煙する人が側にいる限り、家族も職場の人も吸わされています。この害が結構大きく、受動喫煙に対して配慮する責任が職場などに求められるようになりました。これは学校でも同じことです。いや、学校でこそこれを徹底させなければなりません。
特に日本は世界でも類を見ない、未成年の喫煙行為を禁じる法律がある国です。そうでありながら、教育の現場で未成年の禁煙を教えなければならない立場の先生、特に体育や保健の先生で喫煙している人が多いです。またそこに来る親たちも全然そういう意識なく吸っています。これはおかしいことです。そして、未成年者喫煙禁止法は主に販売業者と親に対する罰則を設けている法律ですけれども、完全に空文化しています。特に、タバコの自動販売機もそうですね。年齢を見分けるわけでもないのに、野放しの状態になっています。このようにいろんな矛盾があるのです。
国立がんセンターが行った20年にわたる世界最大の疫学調査では27万5118人をタバコを吸う人と吸わない人を分けて20年にわたって追跡調査しています。その結果、何本吸えば何倍どういう病気になって、特に成長期に吸うとどれほど害があるかなどの統計が出されています。これが世界に知られ、世界各国は禁煙の方向に進み、シンガポールでは喫煙者は2割を切っています。ところが日本はどうでしょう。成年男子5割以上の人が喫煙しています。日本は逆行しているのです。
このように、これまで申し上げたことをはじめ、世界各国の比較や実例、効果的な禁煙法などを著書に紹介しています。私は特に学校の先生がこの著書を使い、子どもたちに教えてほしいという目的で書きましたが、ぜひこの際多くの方に読んでいただき、「タバコよ、さようなら、健康こんにちは」とさわやかな人生を送っていただきたいですね。(白石尚)
2003年6月25日読売新聞鹿児島版に掲載
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